済州野焼き祭り~野焼き文化で探る済州と日本のつながり
令和3年3月15日
「済州と日本のちょっといい話」は、2020年4月から2022年7月まで2年4か月にわたり済州で総領事を務めた井関至康前総領事が、済州の様々な場所と人々に出会い、済州道民の皆様からの協力を得て、取りまとめたものです。多様な分野で長い間続いてきた済州と日本の深い関係に触れる一助となれば幸いです。
※「済州と日本のちょっといい話」の記事内容は連載当時のものであり、一部内容は最新の状況と異なる可能性があります。
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井関至康総領事は、済州市が1997年以来ほぼ毎年開催している「済州野焼き祭り」に参加しました。今回は新型コロナウイルスの影響で、(1)式典等はオンラインで開催、(2)現地では事前登録した自動車400台分のみ車内から見学可ということで、(1)については済州市の依頼を受けて事前に録画した動画でご挨拶させていただき、(2)については事前登録の上、週末に会場のセビョル・オルムに(オルムは済州の方言で「寄生火山」のこと)自家用車で駆けつけました。例年であれば、日本からも、済州市の姉妹都市等(和歌山県和歌山市、兵庫県三田市、大分県別府市、東京都荒川区)からの来賓があるのですが、新型コロナの影響で参加困難ということで、恐縮ながら、日本の姉妹都市等の皆さんの分も、という気持ちで参加しました。
済州野焼き祭りとは?
1997年からというと、比較的新しい行事のように思えますが、もともと済州島では、農閑期に中山間地帯で牧畜を行うにあたり、晩冬から啓蟄の時期にかけて、野焼きをして古くなった草や寄生虫を無くし、若い良質の草を得るという伝統があったそうです。この伝統を現代的なお祭りの形にアレンジしたのが、「済州野焼き祭り」ということです。さらには、済州市によれば、こんな野焼きの話が伝わっているそうです。三姓穴を訪れた際に見たように、三姓穴から湧き出た3神人は、海を渡って(もしかして日本からかも?)やってきた3人の姫と、彼女らが持ってきた五穀の種で楽しく暮らしていました。ところが、何不自由無い生活でかえって怠けてしまい、秋になると食糧が不足するようになりました。そこで、三姓穴から持ってきた火種を炊いてお祈りしたところ、強風が起きて野原を焼いてしまいましたが、春になったら焼けた野原から穀物がぐんぐん育つようになり、3神人は今度は一所懸命に働いて済州島が長らく平和な島になった、というお話しです。
済州野焼き祭りに感じる日本との縁
日本でも、済州市の国際交流都市・別府市「扇山火まつり」はもちろんのこと、奈良の「若草山焼き」、伊豆の「大室山焼き」、岩手県一関市の「藤沢野焼き祭り」等々、神事として行われたり、縄文時代や古墳時代にまで遡るような野焼きの文化が見られます。済州の野焼きを眺めながら、済州の野焼きを巡るお話に接すると、済州と日本は、どうもどこか根っこのところでつながっているようだということが、改めて実感されます。今回は残念ながら日本からの皆さんはお越しいただけませんでしたが、日本からの多くの方々が済州の野焼きを楽しみ、そして済州の皆さんが日本の野焼きを楽しみ、お互いの根っこでのつながりを実感できる日が早く来ればいいなと思いました。
訪問関連フォト

△燃やされる前のセビョル・オルム。今回は、新型コロナの収束を願い、「野火COVID19-OUT」という文字とともに焼きました。

△現場で、職員の方の誘導を受け、十分な新型コロナ対策を取った上で、主催者の安東祐(アン・ドンウ)済州市長と御挨拶しました。

△野焼き祭りの様子は、オンラインと地元ケーブルテレビ局により生中継されました。総領事も、事前撮影した動画で御挨拶をさせていただきました!
韓国語で話しましたが、日本を含む世界各地の姉妹都市・友好都市にも届けたいという済州市の思いで、英語の字幕も付いています。

△野焼きが始まる前に花火やレーザー等で祭りの雰囲気を高めます。

△秋から冬にかけてのセビョル・オルムは、済州島有数のすすきの名所です。
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