済州マッコリ~日本の目利きと二人三脚で発展!韓国本土では売ってないのに日本では売ってます

令和3年10月26日
「済州と日本のちょっといい話」は、2020年4月から2022年7月まで2年4か月にわたり済州で総領事を務めた井関至康前総領事が、済州の様々な場所と人々に出会い、済州道民の皆様からの協力を得て、取りまとめたものです。多様な分野で長い間続いてきた済州と日本の深い関係に触れる一助となれば幸いです。
※「済州と日本のちょっといい話」の記事内容は連載当時のものであり、一部内容は最新の状況と異なる可能性があります。

   

 井関至康総領事は、(株)済州マッコリに、済州道韓日親善協会の副会長としても平素お世話になっている高相候(コ・サンフ)会長・代表理事を表敬訪問し、同社のマッコリ工場を視察しました。
 

「マッコリ」とは?原料、度数や味は?

 マッコリとは、韓国で伝統的に愛好されてきた、穀物(現在は多くの場合コメ)を主原料とするお酒です。済州マッコリのようにコメを原料とする場合は白く濁った色合いになり、また一般的には、比較的低いアルコール度数(6~8%程度)で、乳酸菌が効いた味わいが特徴的です。
 

済州マッコリが美味しい理由:「生マッコリ」と水、そして…

 済州島は、海産物や黒豚は有名ですが、火山性の土壌であり、韓国では最も台風が多いこと等から、米作には向いていないとされています。なんですが、コメを主原料とする済州マッコリは、韓国本土から済州島を訪ねる訪問者の皆さんが「済州島はコメがあまり取れないはずなのに、どういう訳か、済州マッコリはものすごく美味しい」と絶賛する声をよく耳にします。実際、飲んでみると、マッコリにありがちな甘ったるい感じが無く、控えめな甘さに微炭酸のさっぱりとした酸味、ほんのりとした苦みで、韓国本土からの訪問者の皆さんが口をそろえて賞賛するのも納得させられる逸品です。
 なぜこんなに美味しいのか?高相候会長に要因を伺うと、加熱処理をしていないので酵母菌・乳酸菌が生きている「生マッコリ」である上に、済州島は火山岩の地質で濾過されるいい水が得られるから、とのことでした。
 

済州マッコリと日本の目利きとの二人三脚!

 そしてもう一つ、若い頃からマッコリ造り一筋で取り組んできた高相候会長が美味の要因として挙げられたのが、日本との関係です。済州マッコリは、韓国では済州道でしか販売されていませんが、実は日本では、2009年以来、この味に惚れ込んだ日本の輸入業者さんによって、販売されています。高相候会長は、最初に日本で是非販売したいとのオファーを受けた時は「韓国本土にさえ送っていない門外不出の酒なのに、日本に輸出なんてとても無理」と断ったそうですが、あきらめなかった日本の輸入業者さんから4回目の説得を受けて、その熱意にほだされ、日本での販売を開始。そしてそれ以来、日本の輸入業者さんと二人三脚で、製造工程、冷蔵物流体制、容器やデザイン等々の研究・改善を繰り返し、品質にさらに磨きをかけてきたとのことです。目下のコロナ禍の影響は避けられませんが、それでも、日本市場でマッコリブームが一段落した後も、着実な成長を遂げる実績を挙げるに至っているとのことですし、また、こうした海を越えた二人三脚の取り組みが、韓国本土からの訪問者の皆さんも賞賛する結果につながってきているのでしょう。
 ちなみに、日本の顧客リストを内々一部見せていただくと、芸能人御用達で知られるあの高級焼肉チェーン店や、予約が取れなくて悔しい思いをした思い出があるあの焼肉店等々、有名なお店がずらりと並んでいます。「やはりお目が高い」とうなってしまいましたが、それと同時に、このリストを見ているだけでも、よだれが出てきそうです…。
 
 どうして自分は、韓国で、日本の焼肉屋のリストを見ながら、よだれを垂らしているのだろう?ふと我に返りながら、このような逸品を産んだ済州の風土と、日本の目利きが、手を携えて織りなしてきた足跡が、済州と日本の特別な関係の新たな1ページとなっていることに、改めて感じ入ったのでした。
 

訪問関連フォト


△新型コロナ対策を講じながら、高相候会長から、マッコリの工程に沿ってご説明いただきました。
 

△発酵中のマッコリの原酒の前で。すでに美味しそうです…。
 

△社屋の屋上から、済州島の象徴・漢拏山を背景に記念写真。観光業をはじめとするサービス業と一次産業が中心の済州にあって、済州の観光振興にも貢献している済州マッコリのような製造業は、大変貴重な存在です。そこに済州と日本の関係が一役買っているというのは、何より嬉しいお話しですが、高相候会長からは、自分よりも年下の日本の輸入業者さんとの関わりを通じて、日本のモノ造りにかける精神や、食べ物を粗末にしない姿勢等、多くを学んだとのお話しもいただきました。高相候会長、心のこもったお話し、大変ありがとうございました!
 

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