【コラム】ブラブラ歩いて探しました、済州の「OKINAWA」

令和3年3月19日
「済州と日本のちょっといい話」は、2020年4月から2022年7月まで2年4か月にわたり済州で総領事を務めた井関至康前総領事が、済州の様々な場所と人々に出会い、済州道民の皆様からの協力を得て、取りまとめたものです。多様な分野で長い間続いてきた済州と日本の深い関係に触れる一助となれば幸いです。
※「済州と日本のちょっといい話」の記事内容は連載当時のものであり、一部内容は最新の状況と異なる可能性があります。



 済州と沖縄は、ともに離島の地方自治体ということもあり、それぞれ「耽羅国」、「琉球王国」として交易で成り立っていた時代があったという歴史もあり、お互い意識するところがあるようです。
 

済州と沖縄、まさかの豚つながり

 済州に来られたことがある沖縄の方や済州の方からは、済州が特別自治道制度や国際自由都市制度を導入するに際して、沖縄のこともいろいろ研究された、というお話しを伺ったことがあります。済州で水族館を作った際には「美ら海水族館」もベンチマーク しましたしね。
 
 また別の沖縄の方からは、「済州にも『ふーるー』があるさあ!」と言われました。「ふーるー」とは、トイレの下で豚が待っているスタイルの、沖縄の伝統的な豚便所です。済州では「トンシ」と言いますが、市内からちょっと離れたところでも1980年代くらいまでは、「トンシ」の家も多く、夜中に行くのが怖かった、というお話しもよく聞きます…。


△済州の「トンシ」。済州民俗自然史博物館にあるものです。


△参考までに、沖縄の「ふーるー」。那覇の北西海上58km、慶良間諸島と久米島の間にある渡名喜(となき)島の古民家にあるものです。
 
 そうであれば、総領事館の周りにも、済州と沖縄との縁を感じさせるものがあるのではないか?と思って、ブラブラ歩いて探してみました。 
 

あれ?済州にも「石敢當」?気になる石碑の出どころは…


△ブラブラ歩いて見つけた、済州の「泰山石敢當」。済州島内に何ヶ所か、全く同じものがあるようです。

 早速、総領事館から交差点を渡ってすぐのビルの下に、「泰山石敢當」と書かれた石碑を発見!沖縄では、丁字路の付け根のところに、魔除けの意味で、中国の泰山に由来するという「石敢當」(せっかんとう、いしがんとう)という石碑が建てられていることが多いのですが、これがまさか済州にもあるとは。と思って、ビルのオーナーの方に伺ってみると、なんのことは無い、ビルが丁字路の付け根にあるから置いた方がいいと、風水師に勧められた、とのこと。残念ながら、沖縄との直接の関係は全く無いことが判明しました。


△沖縄では石敢當は至る所に立っていますが、沖縄以外の日本の各地でも時折見受けられます。写真は、鹿児島県知覧の武家屋敷通りの丁字路に立っているものです。
 

鉄道が無い済州にも!公園に蒸気機関車が!


△済州・三無公園のミカ3型304号機。鉄ちゃんの貴方のために、あえて激レアの雪の写真を掲載します。

 一つ目が空振りに終わった後も、ブラブラと探してみると、なんと近くの三無(サムム)公園に、蒸気機関車が置かれているのを発見。鉄道が無い済州の公園に蒸気機関車があるなんて、まるで那覇市の与儀公園のD51みたいじゃないですか! 調べてみると、案の定、三無公園の蒸気機関車も、与儀公園のD51と同様、鉄道が無い済州の子供たちへのプレゼントとして、「本土」から持ってきたということでした。これはうっすら関係あり、ということでしょうか。
 
 ちなみに、三無公園の蒸気機関車は、1944年(昭和19年)に日本製の部品を朝鮮総督府鉄道局京城工場で組み立てた「ミカ3形」304号機ということです。ミカ3形(製造当時はミカサ形と呼ばれたようです)は多数制作され、鉄ちゃんの間では日本のD51に例えられることも多いそうで、この点でもうっすら似てますね。
 

済州で「OKINAWA」食堂を発見するも…!?

 さらにご近所をブラブラ探します。すると、その名も「OKINAWA」という食堂があるではありませんか。済州で沖縄の料理が食べられる!と思って、早速お昼を食べに行きました。席について「とりあえずゴーヤチャンプルお願いします」と言うや、「あはは、何言ってるんですか~」。渡されたメニューを見ると、あれれ? 刺身をはじめとする、韓国風日本料理(「日式」と言います)のメニューがずらりと並んでいますが、沖縄と関係があるメニューは何一つありません。結局、食べたのはアルタン(鱈の卵スープ)定食でした。
 
 それにしても、こんななのに、なんで店の名前は「OKINAWA」なんですか? お店の人に聞くと、「いやー、社長が、済州と沖縄って、なんか似てるよね~と言って、店の名前にしちゃったんですよね~。」
 
 結局、その後も、済州で沖縄の料理が食べられるお店は、見つかっていません。ですが、総領事館の周りをブラブラ探しただけでも、済州と沖縄の間に存在するゆるーい関係が、なんとなく感じられるような気がしました。
 

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